億り人続出の仮想通貨市場。しかし、仮想通貨によって得た利益は雑所得扱いとなるため、税制上はかなり不利となってしまいます。
その一方、損失は繰り越せないとなっていることから、現行の税制に不満を覚えている人も多いのではないでしょうか。かと言って、制度に納得いかないからといって税務署を無視するわけにはいきません。
確定申告義務があるのに、それをしなければ税務署特有のきついペナルティーを科せられることとなってしまいます。ですが、節税対策をすることで支払税額を抑えることは可能です。今回は、皆さまでも講じることのできる4つの節税対策をご紹介していきます。
まずは節税について正しい知識を持つ
当たり前のことと思うかもしれませんが、節税と脱税は異なります。節税は税法を順守しながら、それに認められている内容に沿って支払税額の逓減をするものであり、脱税は税法において認められていない行為をおこなって虚偽の申告をおこなうものです。
よりわかりやすく脱税を説明するのであれば、でっち上げや虚偽による利益計上といえるでしょう。しかし、意図的なものであるか認識の違いかによって判断が分かれますので、具体的な事例とともに説明していきます。
例えば、遠方で仮想通貨の知識を深めるためのセミナーがあったとします。もちろん移動費や滞在費などがかかってきますが、これは仮想通貨の取り扱いによって利益を求める目的と直接的な関係があると考えられるため経費とできます。
一方、プライベートな旅行にかかる費用は仮想通貨の取り扱いと関係のないものであるため、経費として認められません。これを仮想通貨のセミナーのためであったとして申告すれば経費として認められるかもしれませんが、そのような事実は存在していないのでバレれば脱税行為となるのです。
ところが、このプライベートな旅行も“仮想通貨の取り扱いで疲労やストレスが溜まったため、それを発散するための福利厚生的な意味合いでの旅行”として申請した場合には、脱税行為とはなりません。
ただし経費として認められるかどうかは税務署の判断となりますのでこちらでは控えますが、仮に経費として認められなかったとしても、経費に対する考え方の誤りであるとされるため、後に修正申告をする運びとなります。
仮想通貨の税金についてはこちらでも詳しく解説しています。
>仮想通貨の利益。税金逃れができるって本当?利益と税金の仕組み
>仮想通貨の税金とは?利益が出ててもばれないって本当?
現状で仮想通貨の税金についてはまだ法整備が行き届いていない傾向もみられるため、正直すぎるほどの内容で申告・納税したほうがいいかもしれませんが、やはり税額を小さくするためにできることはやっておきたいものです。
そこで以下に、節税できる可能性のある方法をご紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。
1.ストロングホールドし続ける
トレードをせずに仮想通貨として保有し続ける方法であれば、利益確定しないため課税対象自体が生まれません。
仮想通貨を日本円に替えたり、商品を購入したり、他の仮想通貨と交換するなどして仮想通貨購入時との差額を利益として取り扱うわけですから、買ってから寝かせておけば算出する利益自体が存在しません。
含み益には課税されないため、ストロングホールド(ガチホ)する限りは無税です。
しかし、十分に値上がりするのを待ってから利益確定したとしても、その時に支払う税額は変わりませんし、現在の価値をそのまま将来も保っているかどうかは誰にもわかりませんので、トレーダーならではのリスクと背中合わせの方法ともいえるでしょう。
この節税方法を実践するメリットとしては、まだまだ右肩上がりの仮想通貨市場に参入しておき、すぐに利益確定しないことで当面は無税としておきつつ、税制の改善を待つことといえるかもしれません。
記憶に新しいFXの税制改善も、一般大衆にFXが浸透されたことを受けてのものでした。そのような前例があるのですから、仮想通貨取引を取り巻く環境の変化も早々に訪れることが期待できます。
2.個人事業主として登録する
個人事業主として登録しておくことにより、単なる一個人として申告するよりも経費を計上しやすくなります。言い換えれば、事業主として責任を持ってやっていることを税務署に届け出ているからこそ受けられる優遇措置となるでしょう。
個人事業主にも白色・青色と2種あり、それぞれで享受できる節税対策も異なってきます。
【白色申告する場合】
個人事業主として仮想通貨事業を始めたものとし、税務署へ開業の届け出をするとなれば、なんだか大袈裟に思える人もいるかもしれません。
サラリーマンであれば副業禁止の規定なども頭をよぎり、都合の悪いものと映るかもしれませんが、決してそのようなことはありません。個人事業主として開業届を済ませ、白色申告としていく方法は普通のサラリーマンにこそピッタリのものなのです。
帳簿の作成をしっかりとおこないながら、事業者としての責任ある行動を重ねていくことで下記の項目が必要経費として控除できるとされています。
・仮想通貨取引所でかかる取引手数料
・仮想通貨取引所への入出金にかかる振込手数料などの手数料
・仮想通貨投資に関する書籍代・新聞代
・仮想通貨投資の有料情報の購入費用(有料メルマガや有料サイトなど)
・仮想通貨について催されるセミナーへの参加費用、移動費や宿泊費
何が控除できて、何が経費として認められないかの判断は、あくまで仮想通貨取引と直接的に関係性があるかどうかによってなされます。
【青色申告する場合】
仮想通貨によって得た利益は、通常であれば雑所得として申告することとなりますが、法人として運用する場合には事業所得となりますので、適用される税制自体がまったく別のものとなってきます。
事業所得として申告した場合、青色申告特別控除という枠があり、上記した白色申告時と同じ手間を日頃からおこなっていくだけで利益から65万円の控除が認められます。つまり、100万円で購入した仮想通貨が150万円になったので利益確定したのであれば50万円の差益となりますが、65万円まで控除されますので税金がかかってこないこととなります。
上記のように青色と白色では、青色申告のほうが税制上は有利となっています。では、どのようにすれば青色とすることができるかですが、基本的には申請書を税務署へ提出するだけです。
個人事業主としての開業届だけを提出しているだけでは白色申告となりますので注意しておきましょう。青色申告を希望する場合には、開業届を提出する際に税務署で担当職員さんへ質問すれば、よりわかりやすく答えてもらえると思います。
仮想通貨での所得、確定申告についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
>仮想通貨の税金って?節税、計算、確定申告はどうするの?
3.決済のタイミングを調整する
毎年1月1日から12月31日分までの利益総額を確定申告の所得とするわけですから、決済のタイミングを調整することで意外な節税効果を得られます。いくつか代表的なものをご紹介していきます。
【マイナス通貨も決済することで利益額を圧縮】
課税対象となる利益とは、利益確定させた金額を集計するわけですが、その集計はプラスのものだけを対象とするわけではなく、マイナス分は差し引きながら合計したものを利益とするわけです。このため、年度末あたりには損失が出ている仮想通貨を売却するなど処分し、利益総額を圧縮することで節税できます。
我慢していた含み損を確定損としてしまうので冷静な判断が必要ですが、含み損自体が損失であることを考慮すれば悪くない手段ともいえます。
そのままホールドしておいて含み損が更に大きくなってしまう場合もあれば、翌年の仮想通貨取り扱い結果がマイナスだったときには損失の繰り越しができない(例外を除く)ため、1年前に決済して支払税額を抑えておくべきだったと後悔することともなりかねません。
【毎年少しずつ利益確定する】
個人として雑所得による確定申告をするのであれば、利益総額が20万円に届かなければ確定申告をする必要がなくなります。このため、20万円を下回るように少しずつ利益確定していけば税金がかかることはありません。
上でもご紹介したストロングホールド(ガチホ)とも通じるところがありますが、やはり長期ホールドは値下がりリスクがありますので、理屈上は節税効果を得られるとしても、実際には難しいといえます。
このような背景より、長期ホールドしておくことが前提であった場合に、20万円を下回るようにコツコツと利益確定していくのは悪くはありません。
4.その他の方法
これまでご紹介した以外にも、節税効果の得られる方法はいくつかありますが、よく見かけるものをご紹介いたします。
【マイニングを利用して経費にする方法】
マイニングにかかったコンピューター購入費および電気代は経費として計上することができます。
しかし、それを仕事以外に使っているような場合には仮想通貨取引分とプライベート分に按分しなければならないなど、やや面倒なものとなっています。マイニングの場合には事業主として青色申告するほうがおススメといえます。
【ふるさと納税を利用する方法】
最近、流行りのふるさと納税を利用することで、その地域の特産品などをもらえることとなりますので、それらを購入したものと思えば、節税効果と同様の効果が得られているともいえるのではないでしょうか。
欲しいと思う特産品から納税先となるエリアを選択するなどできますので、楽しみが増えるのもメリットといえます。
最後に
誰でも支払税額はできる限り抑えたいものです。が、税法上認められていないことを個人の判断でおこなえば、脱税行為とみなされる場合もありますので十分に注意してください。
税務署では確定申告についての相談も乗ってくれますが、税額を小さくするための相談はなかなか口にしづらいところがあります。
儲けた金額によっての話となってしまいますが、大きな利益を手にしているのであれば、税のプロフェッショナルである税理士へと依頼したほうが確かな手続きでより多くの節税効果が得られることでしょう。
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